「ウィラン…ウィラン!」
モイラさんの心配そうな声で目が覚めた。
「…ん…なに?」
「何って…すごい汗。うなされてたから…」
「んー…平気。ちょっと、思い出してただけ…」
この数日の間に、カーンおじさんと、従兄のゴンちゃん、友達のジョスエさんを続けて見送った。
ジョスエさんなんて、ホントについ先日、愛娘さんをお嫁に出したばかりなのに…
「ねえウィラン。泣きたいなら泣いて良いんじゃないかな?ウチのパパなんか、ここんところ毎日泣き上戸のヤケ酒ばかりで困るわーってママが言ってたわ。」
そう。
お義父さんのレッラさんも、ぼくと同じでとても辛い時期を迎えていた。
レッラ「あーぁ。カーン君もいなくなっちゃうし、弟のマンフレッドまで先立っちゃうんだもんなぁ」
「はぁー。二日酔いにウィアラさんのスープは効くね。」
カーンおじさんの葬儀の日、レッラさんは友人代表で参列していた。
レッラ「でもカーン君はすごいよね。娘二人とも山岳兵にお嫁さんに出して。」
「うん…すごい人だった。」
キャラの強い兄や姉達に負けない、とても芯の強い人だった。
「でも、さすがのカーン君も甥っ子がすぐ後を追いかけて来るとは思わなかっただろうね。」
「…ゴンちゃんは叔父さんを追い越さなくてよかったって言ってました。」
…実は具合が悪いと聞かされてたのはゴンちゃんが先だったのだけど…。
「あ、そうだ。神官様は元気?どうなんだろうね、若い兄貴をガノスに送る役目なんてさ。」
「僕みたいにヤケ酒して泣いてなんていられないだろうし、辛いだろうね…」
今日のお義父さんはやたら饒舌だ。
「レッラさん…レッラさんはまだ元気だよね?」
「あはは。今の所心配ないよ。カワイイ孫たちと遊ぶのが楽しくて堪らないんだ。」
歳を取ると、涙脆くも、よく笑うようにもなるんだ、とお義父さんははにかんで笑っていた。
ぼくはまだ、ティールパパとの笑顔の約束があるから、みんなの前ので泣いちゃダメだって思ってしまう。
「パパー?今日の朝ごはんなあに?」
歩き始めたばかりのシン君がベッドにへばりついてる。
「えーと、今日はモイラさんの誕生日だから桜餅かなー。」
「さくらもちってなぁに?」
「シン君!お姉ちゃんが教えてあげる!さくら餅ってねえ、ほら、いつもテーブルに置かれてるヤツよ。ホンモノはおいしいんだから!」
「あはは。カスミさん。今日用意したのはばあばの好物じゃ無い方だよ。」
「ホントだ☆食べていいの?」
「ぶっぶー。まだダメでーす。ちゃんとママにおめでとうって言ってからね。」
泣きたい気持ちになるに日もあるけれど、こうやって家族に囲まれてると、不思議と笑顔が溢れて来る。
さて、今日は何して遊ぼうかな。