翌朝、サウナのような
暑さと、汗でベトベトする
身体の不快感で目が覚めた。
熱を測ると、39.6℃。
唇がカサカサにひび割れ、
内臓まで日照りで
やられてしまったかのような
喉のかわきで、麦茶を飲みに
行こうと部屋の出入り口に
視線を移すと、
無い!
出入り口がない。
熱で、方向感覚がくるってしまったのか
と、部屋を360℃見渡したけど
どこもリビングに通じていない。
1周して、もとの場所を
みると、クロスと同系色の
引き戸がつけられていた。
この引き戸は、建付けが悪くて
物置にしまっていたはずなのに……
自分の吐息すら熱く感じ、
脇があせで、ぬるぬるしているのに
鳥肌がたった。
戸は動かない。
わかっていたけれど、
浅い引手に指の第一関節をまげ
ひっかけ、引いてみても
びくともしない。
それでも力いっぱい引く。
痛いっ、
中指の爪が半分折れて、
真ん中に白い筋がはいった。
身体を起こしていることが、
しんどくなり1度布団へ横になる。
空気が熱していて
呼吸が苦しい。
全身が砂漠に
なってしまうかのよう。
ぷう助が暑さにやられてしまう。
布団とオムツ以外、なにもない
部屋を見渡しても焦りしかでなかった。
じわじわと陽が照りつけ
温度が上昇していく部屋。
携帯は部屋の出入り口すぐ
横のコンセントで充電している。
引き戸さえなければ、
手を伸ばし、とれる距離なのに。
私が甘かった。
勝手に名前を決めて
なにも、ないわけがないのに。
「寝てないといけませんね」
という貞彦さんの言葉にも
油断した。
物音がしたときこそ、
警戒して起きるべきだった。
出張の準備だったなら、私を
起こして、やりなさいというはずなのに。
全部、自分のいいように解釈
してしまった。
打つ手が、思い浮かばないかわりに
後悔ばかりが、心に焼き石を
落とすかのよに
痛みと熱さを持ち合わせながら
増えていった。
※貞彦さんに特定されないようフェイクを入れています。
すみません。
※数年前の出来事です。現在はぷう助と幸せに暮らしています。
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