アホでマヌケな包帯

俺の名前は櫻井翔。20才、大学生。





ベッドの上で仰向けになって、今日もタイクツだってため息。





大学に入ると同時に引越し屋のバイトを始めた。


土日とか長期休みの時だけだけど、給料いいからって。





何でバイトかって車を買うため。


今は親の車を借りて乗ってるけど、親の車ってだけで何かイヤで。


夏休みはできるだけバイト入れて稼ごうって思ったのに、まさかの夏休みバイト初日で俺は何をどうコケたのか大怪我をした。





右の大腿骨骨折。マジで大怪我。





夏休みはもうとっくに終わった。大学も始まってる。


なのに俺は今日も病院。明日も明後日も明々後日も病院。





ヒマすぎて、灰になる。





はああああああってまたため息を吐いて、もうやり尽くした感満載のスマホのゲームでもやろうと思ったら、ぶぶってスマホが震えた。





『生きてる？』





メールをよこしたのは、高校からのツレのニノ。二宮和也だった。


毎日恒例の生存確認メールだ。





『死んでる』
『なーむー』
『拝むな』
『払いたまえ清めたまえ』
『祓うな』
『………』
『黙るな』
『諦めろ』
『ですよねー』





入院した当初こそ、ツレたちやバイト先の社員さんが連日お見舞いに来てくれたけど、こんだけ日が経つとダメだな。誰も来やしない。


それでもニノはマメな方か。来ないけど、メールは毎日、だから。




そこで終わったメール。


画面に向かって、さんきゅって小さくお礼を言った。






入院から１ヶ月が経過した。松葉杖も慣れたもんだった。


でも動くと痛い。痛いから動きたくないけど、ヒマだから動きたい。でもでも痛いから動きたくない。


それはいつもの俺的葛藤。





ただ生理現象は別問題。





トイレ行きてぇ。





しょうがなくゆっくり起き上がって、よいしょって、いててててって言いながらベッドを降りた。






その時だった。





「入りますよー」





ガラガラガラガラって音を立てながら、俺が居る病室にストレッチャーが運ばれてきた。





入ってきた瞬間、鼻についた焦げ臭いにおい。





何？って見たら全体的に黒く汚れた人がそこには乗っていた。





何？





黒い。


見えている肌が、服が明らかに黒い。


だから、腕に巻かれた包帯が異様なほど白く見えた。





くふふふ。くふふふふ。





少し鼻にかかった、少しキーの高い、笑い声。





え、何。





それが彼、ひとつ年下の、相葉雅紀との出会い、だった。