包帯の優良通販店舗を紹介、ビックリされるのがこのアイテム数の多さです

飛鳥(えへへ?奈々未?

この前のもう奈々未なんか知らないから！と頬をふくらませていた飛鳥はどこへやら。

まだ包帯だって巻いてるし、運動はドクターストップされているけど、やっと退院できた橋本先輩にこれまで以上になついている。

橋本(ちょ、ちょっと飛鳥、流石にこんな真夏にくっつかれると暑い…

飛鳥(私も暑い

橋本(じゃあ離れてください

飛鳥(嫌だ

橋本(…はぁ、じゃあもうそのままでいいよ

野球はできないけど、部活には絶対行くから！という橋本先輩の言葉通り、毎日顔を出してくれている橋本先輩。

ベンチに座りながらみんなを眺める橋本先輩の右手にはボールが握られていて、時々左手にも乗せてみたりとちゃんとリハビリらしきこともしていて、早く復帰したいという気持ちが伝わってくる。

しかし、そんな橋本先輩にじゃれる飛鳥。

リハビリは一旦中断してしっかりと甘えさせている橋本先輩は、そうは言っているもののたぶん甘えてくれることが嬉しいんやないかな？

橋本(そういやまいやんにお礼言ってないよね

飛鳥(あ、忘れてた

聞いたところによると、まいやんが橋本先輩と飛鳥の仲直りに一役買ったそう。

さすがやな?と記録を取りながらまいやんを眺める。

いつもと変わらず、野球に打ち込む姿。

面白いし優しいし、メンバー思い。ちょっと抜けている部分があるけど親しみやすい先輩。

そして真剣になると途端にかっこよくなるギャップを持っている。

ほんと、いい先輩や。

若月(七瀬?！

西野(あ、は?い！

ん、若月から呼び出しや。

道具かなんか必要なんかな？

あ、違う。ノックのボール渡しか。

飛鳥(いってらっしゃ?い

西野(うん、飛鳥その記録出来たらとっといて

飛鳥(は?い！

上機嫌そうな飛鳥に記録を頼み、私は若月のところへ走る。

ボールを渡すだけの簡単なお仕事なんやけど、部活中で一番若月の役に立てる大事なお仕事。

マネージャーは三人いるから、ボールを打つ人のご指名でやるんやけど、大体指名する人は決まってる。

結構残酷なシステムやけどね。

さてと、暑いけど頑張ろっと。

あ?疲れた…。

部活も終わり、部室で制服に着替えてから昇降口で革靴に履き替える。

いつも通り、西野七瀬と自分で書いたテープが貼ってあるロッカーを開けて上履きを脱ぎ、革靴を取り出してしゃがむのもめんどくさいので強引に足を突っ込む。

若月(七瀬は可愛らしい女の子って感じだけど、意外とガサツだよね

そういうところも好きだよと微笑みながら言われるもんだから、開けられたロッカーの扉で赤くなっているであろう顔を隠す。

あ、照れてる?なんてニヤニヤしてる若月にもう！と反論すると、あ…とロッカーを開けた若月が声を出した。

…また？

若月(ごめん、ちょっと行ってくる。先に帰ってていいよ

西野(…うん、わかった

ほんまは嫌や、一緒に帰ろうって言いたいんやけど、しょうがないから…。

バンっとロッカーを閉め、脱ぎかけた上履きを地面を蹴って履き直すと走って行ってしまった若月の背中を見送った。

…はぁ。

また告白か。

別に若月は絶対断ってくれるんやろうけど、やっぱり不安なものは不安や。

寂しいし一人で帰りたくもない。

誰もいない昇降口。

静まり返ったこの空間はななの不安をもっと増幅させる。

…ちょっと覗いてみるくらいはええよね？

だって若月がいないと暇やし、ほんまに断ってるんか確認するぐらいは許されるよね。

よし、行こう。

覚悟を決めたななはぎゅっと肩にかけたスクールバックを握り締め、若月の後を追った。

…あ、あの子知っとる。

若月の後を追ってたどり着いたのは、部活が終わって人のいない体育館。

冷房が効いていない蒸し返すような暑さの中、若月ともう一人の女の子が体育館の真ん中で向き合っていた。

若月の顔はこっちに背を見せているから見えないけど、女の子の顔はわかる。

最近、というか春頃から時々グラウンドの端で部活を見てた子。

体育館の重たい扉から少しだけ顔を出して、ゴクンと唾を飲み込み若月を見守る。

若月、断ってくれるよね？

ここからじゃ遠すぎてなにを言ってるのか聞こえないから、あの子の表情でしっかり読み取らないと。

じーっと一つの表情の変化でさえ気づけるように見ていると、あの子の口が動いてすっと頭を下げた。

告白したんか…。

無意識に扉を握る手に力が入り、息を止めた。

若月の答え…。

わかってはいるけど、やっぱり怖い。

ビクビクとした様子でゆっくりと顔を上げた生田さん。

若月はまだ答えていないのか、不安そうに若月を見つめている。

…え!?

次の瞬間、若月の行動に思わず声を出してしまいそうになるのを必死に抑えなければいけなくなった。

それは何故か。

若月がゆっくりと生田さんの顔に顔を近づけたから。

こ、これって…キ、キス？

嘘…。

なんで、なんでキスなんか…。

胸がきゅっと痛くなって、喉が詰まる感覚に襲われる。

若月が…キス、した？

衝撃的すぎて足が震えてきた。

でも、認めたくなくて、もうこんな光景を見たくなくて…。

ぎゅっとスクールバッグの紐を握り、回れ右して体育館を後にした。

もう！若月のアホ！もう若月のことなんか嫌いや！

薄暗くなった通学路を、大股で歩く。

もう若月なんか嫌い！

どうしようもなくモヤモヤして、声には出さんけど心の中で何度も何度も言ってみる。

せやけどモヤモヤとイライラは無くならんくて、むしろどんどん寂しくなっていく。

なんでなん？

なんでこんなに涙が出てくるん？

イライラしてるのに、若月のことを嫌いになったはずなのに、若月のことを考えると悲しくなって涙が溢れてくる。

そんな涙に気づかないフリをして、拭っても拭っても溢れ出してくる涙を止めることもせずに通学路を走った。

…もう、若月なんか…嫌いや…。