(承前)
ステージ正面の上には半円盤状の構造物があり、その側面には窓のような四角く赤い照明がついている。
赤い光に照らされた場内はまるで夜明け前の霧の中にあるようだ。
ピットにも、見上げるシート席にも続々と客が入ってくる。3万人収容のはずだが、4月のレッチリツアーのNBAスタジアムや東京ドームに比べるとなぜかシート席最上段でも近い気がする。
18:50。BGMが「ペインキラー」に代わると周りの客も軽くヘドバンし始める。曲終わり、大拍手。
胸が熱くなる。ここにいるすべての観客があのロブハルフォードとの共演を思い出しているのだ。
開演時間の19:00になってもBGMは止まらない。ピットはもちろん、見上げる500レベルのシート席までびっしりと埋まっている。超満員である。
「演出の都合上、非常灯を消灯します」と言うアナウンスに続いて、非常灯が消えると歓声、拍手。
そしてついに、19:07。あの「BMD」の神秘的なイントロが流れた。その瞬間3万人の観客はシート席も含めて全員が起立し、キツネサインを掲げる。
ステージの全貌が明らかとなる。円盤状の構築物の下に、3つの十字架状の照明セット。ステージの後方には巨大な5面のスクリーンがある。だが、それ以外には、客席への出島や巨大なキツネの構造物など一切ない。シンプルなステージである。
「5つのメタルの魂が5匹の狐となり、5色の狐火となって舞い踊った夏…」
そこに黒=Metal Heads、赤=メギツネ、金=子狐、銀=いぶし銀、白=Corps Paintの5つのキツネマスクが映る。そして、
「5色の狐火がひとつになり、The Oneとなる。諸君、首の準備はできているか?」
という呼びかけに応え、3万人は「Yeah!!!」と大歓声を上げる。
「さあ、巨大キツネ祭りの幕開けだ!」というナレーションに続き、
1.「BABY METAL DEATH」
が始まる。SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALの三人は、他の大会場のようにフェイントを入れることもなく、舞台中央のすっぽんから降臨。あまりのシンプルさに、この3万人の大会場がまるで、大物バンドの前座か、海外の場末のライブハウスででもあるかのように思えた。さすがに5大キツネ祭りで見られたように、白い紗幕の背後からの板付き登場ではないが。
(この部分、2017年9月28日修正)
3万人の大観衆は、ひとつの生き物であるかのように、「B!A!B!Y!M!E!T!A!L!」と声を合わせ、「DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!…」と叫び続ける。
巨大スクリーンでは、SU-が気迫のこもった表情で客席をにらみつけ、YUIがプニプニほっぺの唇をキリリと引き締め、MOAがエクボを見せて「ニヤリ」とする。
そう。ここは、海外の大物バンドとの修行に明け暮れても、TVに露出しなくても、メジャーなロック雑誌に取り上げられなくても、小さなライブハウスの時代からBABYMETALにほれ込み、応援し続けてきた者たちの、3万人の小箱ライブなのだ。Cブロックでは、ギターソロパートで、早くもサークルピットができた。
曲が終わり、怒号のような歓声が響く。暗転後、響いてきたのは、
2.「ド・キ・ド・キ☆モーニング」
のイントロだった。ああ、もうここでぼくの涙腺は崩壊寸前。サマソニ幕張で聴きたかった三人の原点が最初に来た。
5面のスクリーンに、三人の姿がアップになる。SU-は12月で20歳になるというのに、このキュートさはなんだ。表情のつけかた、歌い方、すべてがまたもやグレードアップしている。2011年2月の「月刊Melodix」での「私たち、重音部、BABYEMTALデス!」とか、2012年初めてサマソニのSide Show Messeとか、過去の映像が、走馬灯のように蘇る。
そして、三人が倒れ込み場内から「キャー」と言う歓声が上がる瞬間、ぼくは後ろを振り返った。女性限定エリアのメギツネさんたちを見た。
みんなうっとりとして三人を応援していた。
スクリーンでは、アップになったSU-があくびをし、眠そうな口を押え、起き上がり、「リンリンリン!」と元気よく踊っていた。これぞアイドル!BABYMETALは、誰も否定できない由緒正しき、正統派日本のアイドルなのである。
大歓声大拍手。暗転した場内に「きーつーねー、きーつーねー、私はメーギツネー」というSEが流れる。
3.「メギツネ」である。
スクリーンには、「阿吽」ポーズをとるYUI、MOA、気迫に満ちたSU-のまなざしがフラッシュのように映る。今回、ステージ上の位置とは別に、スクリーン上のYUIとMOAの上手、下手位置はころころ変わる。一瞬前までYUIだったのが次の瞬間MOAに代わったり、上手、下手ともYUIだったり、MOAだったりする。サマソニと比べてちょっとふっくらしたYUIと、ちょっとしぼったMOAの“双子感“が増している。
特筆すべきはSU-の歌で、ピッチが1セントも狂わない。超正確。やはり、英語とともに、短い「ロス期間」といえども本業である歌のトレーニングは絶対に欠かさないのだ。少し前、「正確に歌うこと」にはもうこだわらないといったインタビューがあったが、心をこめ、感情を込め、表情をつけて歌う表現力とともに、正確さも増している。やはしSU-は凄い。日本が生んだ世界の歌姫というコピーは伊達じゃない。
そんなことを考えている間も、場内は「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の大合唱、大ジャンプ大会。入場時にアナウンスされていた「モッシュ、ダイブ、連続してのジャンプなど、危険な行為は固く禁止いたします」という警告など、小箱ライブに通用するものか。
ブレイク。SUは「We are so---happy to be here!」「On the count of three, let’s jump up with the Fo God. Are you ready? A?re y?ou ready---!?」からの「1、2、1、2、3Jump!」と英語での煽り。
だが、この会場にそれを不服に思う者はいない。全員が心を合わせて「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と叫び、飛ぶ。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」にある如く、BABYMETALのキツネは飛ぶのだ!
大歓声で曲が終わると三人は舞台をはける。
ここで始まったのが青山神の、衝撃のロカビリー風ドラム。「ズンタタズンタ」という「ルージュの伝言」(ユーミン)のようなリズム。新曲か?いや、神バンドのソロだ。このリズムに合わせて藤岡神のソロは、なんか妙に和風で、渚ゆう子&ベンチャーズの「京都の恋」みたいだ。続く大村神のソロはいつもどおりアウトな速弾き。BOH神もこのリズムに乗せて速弾き指弾きからタッピングというバカテクソロを聞かせてくれた。
そして、いつものように「ハイ!ハイ!」ではなく、「うんタタうんタ」という手拍子を観客に促しつつ三人が登場。SU-もYUIもMOAもニコニコ顔である。いいなあー。
そして、このリズムのまま、
4.「YAVA!」に突入。
新曲ではなかったが新しいぞ。1月のGuns前座で、神バンドソロ〜あわ玉フィーバーが初披露されたのに続き、ロカビリーソロからのYAVA!という新しい展開が見られたのは貴重だった。
白キツネ祭り@大阪のステージ最前列で見たときははっきりと感じなかったが、離れて見る三人の身長は、SU-がやや高いが、もう三角形ではない。その体が大きくなったYUI、MOAのダンスは、力感にあふれ、アスリート並みのキレを持っている。さらにSU-のダンスも全力感が半端ない。
「♪あれどっち、これどっちパーリラパリラ、パーリラリラ」のシンクロ加減は尋常ではない。
だが、アップになる三人の首筋には大筋の汗が流れ、髪の毛が顔に貼りついている。
にもかかわらず、笑顔。
当たり前のことだが、これが一流ということだ。BABYMETALフォロワーというべき、今はやりの素人に毛が生えたようなアイデアとやる気だけの「ラウド系アイドル」には及びもつかない。美貌、才能、練習量、経験、根性。小学生の頃から一筋に鍛え上げてきたからこそ成しうるパフォーマンス。マドンナ、レディ・ガガのレベル。世界で評価されるとは、こういうことなのだ。
暗転。壮大なシンフォニー。スクリーンには青い雲海。両サイドの十字架照明が降りてくる。レーザーが放たれる。「♪あーいーの言葉…」という澄み切ったSU-の声が3万人の場内に響く。
5.「Amore-蒼星-」である。
イントロのツインギターソロに入ると照明は一転、真っ赤に染まる。スモークがたかれ、十字架状の3つの照明器具が光り輝き、その後ろで3面に絞られたスクリーンの中を、マントこそつけていないが、歌い踊るSU-の目力が強い。美しいツインギターのソロ。SU-は全身からオーラを放ちながら舞い踊る。どうしてSU-はこんなにも美しく強いのだろう。これは広島の三人姉妹の末っ子、おっとりした中元すず香ではない。SU-METALとしか言いようのない一人の女性アーティストである。「メギツネ」でも書いたが、今日のピッチは神がかり的でさえある。ウェンブリー同様、いったん倒れてから立ち上がる際の転調も完璧。アウトロのギターに合わせてぴたりとフィニッシュを決めた瞬間、3万人の観客が怒号のような歓声と拍手とスタンディングオベーション。最初から立っているので当たり前だけど。
場内に「しっしっししし、しししし」というSEが流れる。観客はすかさず「よんよん!」と応じる。その声は大会場を揺るがすほど大きい。つまり、ほとんどの客が、瞬時に何をすべきがわかるのだ。BABYMETALがいくらビッグネームになって海外ツアーや大規模フェスに出ても、この大人数での合いの手は、絶対に味わえないはずだ。そう。ここは日本。BABYMETALの故郷なのだから。ぼくらはみんなBABYMETALを誇りに思う「父兄」なのだから。
YUIとMOAは元気よく、可愛く、ダイナミックにシンプルなステージ上を駆け回る。さすが、この曲でのスクリーンは、中央を抜かした4面。ここでも下手と上手のスクリーンが瞬時に入れ替わる。YUIだけになったり、MOAだけになったりする。今回は「もっと声出して!」「とかまだまだ足りない!」とかの煽りはなく、「よん」の数は合計88回だったが、二人の可愛さ、アーティストとしての魅力が存分に発揮された。
場内の空気がなごんだところで、心臓の鼓動のようなSEが流れ、場内がうす紫色に染まり、赤いレーザー光が放たれる。アミューズならではのレーザーショー。スクリーンは5面となり、心臓の音に合わせて赤いパルスが描かれる。そしてSEが高まり、あのかっこいいギターのリフが流れる。
7.「シンコペーション」である。
ステージは輝くような白色光で満たされ、SU-の気迫のこもった表情がアップになる。
やはり今回、三人のダンスはブラッシュアップされており、ダイナミックかつキレキレである。もしかしたら、これだけのために練習を重ねたということではないのかもしれない。BABYMETALというユニットが持つ、「大舞台に強い」という特性が発揮されているのかもしれない。とにかく、すべての曲で、気合が入りまくり、クオリティがむちゃくちゃ高くなっているのだ。
観客としては「好き嫌い好き嫌い好き、好き嫌い好き嫌い!」とか「回る!」「巡る!」とか合いの手を正確に入れることしかできない。
他のユニットに比べて、新曲のリリースは遅いかもしれない。しかし「BABYMETALに捨て曲なし」というコピー通り、1曲1曲の制作に手間と時間をかけ、ライブでのクオリティを極限まで高め、曲の価値を青天井のごとく高めていくという姿勢こそ、BABYMETALがBABYMETALであるゆえんである。
その素晴らしさを堪能しながら曲が終わると、暗転した場内にドラム音「どんどんどどん」が流れる。
ここでも観客は待ってましたといわんばかりに「META!」と叫ぶ。
8.「META!メタ太郎」の始まりだ。
『ヘドバン』の記事のように、この曲は東京ドーム以降、「子どもにも楽しめるメタル曲」というより、観客がメタルのパワーで一体化し、「♪Woo Woo Woo Woo…」とシンガロングする「裏The One」的な位置づけの曲となった。
「♪銀河系の澄んだ星で生まれました」と歌うMOAの顔はニッコニコ。
観客は単純な振付に合わせて腕を振る。そして、1番から「♪Woo Woo Woo Woo…」と大コーラス。
「♪ぶっ飛ばせ、メタ太郎!」のところでは、正面でバットを振るSU-。広島カープ、今年もセ・リーグ優勝おめでとうございます。
2番が終わり、いよいよシンガロングパート。SU-が「Everybody Singin!」と煽り、場内に、「♪Woo Woo Woo Woo Woo Woo Woo…」の大合唱が起こる。東京ドーム仕様で、転調せずそのまま続く。SU-が笑顔でイヤモニを外す。YUIとMOAも笑顔で観客にシンガロングを促す。その顔は汗にまみれ、髪の毛が貼りついている。
「♪君に届いているか仲間の声」
届いているよ。ここにいる3万人の声、ここに来られなかった日本中のメイトさん、世界中のファンの声が。
「♪君の心のヒーロー呼び出せ」
それは、苦しいとき、悲しいとき、うれしいとき、仲間と語り合うとき、常にぼくの心にいる君たち、BABYMETALだ。
曲が終わり、場内が大歓声と拍手に包まれる。間髪を入れず、ピアノのSEが流れ、スクリーンには見慣れた逆さフライングVの映像。
時計を見ると7:55。ここからフィニッシュへ向かう時間だ。
「♪るるる―るるるー…」とSU-のハミングが流れる。
9.「イジメ、ダメ、ゼッタイ」である。
Cブロックに巨大サークルピットが作られる。ぼくのいた後ろの柵まで、逆圧縮が押し寄せ、身動きできなくなる。
「♪あー」
に合わせてステージではYUIとMOAが駆け回る。ピットでは、まず強烈なモッシュが行われ、やがて超高速のサークルモッシュに変わる。その速度は、ぼくが見てきたサークルモッシュの中でおそらく最高速。全員100メートル走のようなダッシュで走っている。シート席にいたsin-metalさんから見ると、ピットには合計7つのサークルピットができていたとのことで、上から見ていてもその速度は尋常ではなかったそうである。
ステージの生の炎と、スクリーンに映し出される炎がシンクロする。
「♪イジメ」「ダメ!」「♪キツネ」「飛べ!」のXジャンプでようやくサークルモッシュは止まるが、またギターソロになると走り始める。巨大キツネ祭りは、室内会場サークルピットの出現数および回転速度記録をたたき出し、伝説のライブになった(と思う)。
ギターのユニゾンで曲が終わり、興奮さめやらぬまま、場内は青い光に満たされる。またもや場内に縦横無尽のレーザー光が放たれる。
そして、イントロが始まると光は赤く変化していく。
10.「KARATE」である。
スクリーンには巨大な三人の姿が映るが、ライブ映像なのにCG加工され、気迫にあふれて踊る三人の体から真っ赤な炎が噴き出している。というか三人の体から発するオーラが炎に変じているのだ。超かっこいいよー。(溜息)
三人が力尽きて倒れる。炎は消え、青い光に包まれる中、SU-が立ち上がる。そして何かにすがるような表情をしたYUIを助け起こす。そして泣きそうな顔のMOAを助け起こす。三人は肩を組み、アイコンタクトしながら、前へと歩き出す。
「♪セイヤソイヤ戦うんだ…全部全部研ぎ澄まして…」
ここには、海外のライブ会場で観客を煽る三人ではなく、純粋に「KARATE」という曲の意味を伝えようとする三人の意志がある。
だからSU-は「Everybody Jump!」とも言わない。それは、このメッセージを受け取ったぼくらが、心の中で叫ぶ言葉だから。観客は煽られてもいないのにタイミングを合わせてジャンプし、その後もジャンプし続けた。
そこにSU-の歌。
「♪ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ、拳をもっと心をもっと、全部全部研ぎ澄まして…」
横アリでの初披露、ウェンブリー、2016年のアメリカ東海岸ツアーのCarolina RebellionやAPMAsでの「Everybody Jump!」、2017年4月レッチリツアーでの「Turn your phone out!」のスマホライト煽り…さまざまなシーンが思い浮かぶが、まったく煽りのないこの巨大キツネ祭りの観客との一体感こそ、「KERATE」の完成形かもしれない。
そして最後の、拳をキツネサインに変えて胸にしまうあのシーンは、照明をフェードアウトさせて見えなくした。そのシーンもまた、観客が心の中で描くべきものだということなのだろう。
暗転後、雷鳴のSE。不穏なオルガンの旋律…。
「♪伝説の黒髪を華麗に乱し…」
11.「ヘドバンギャー!!!」である。
5大キツネ祭りでは、白キツネ祭り以外、必ずこの曲が披露された。2016年以降ライブでは「封印」されたかの感があったが、この曲こそ、2012年のヘドバ行脚〜鹿鳴館、そして2014年の日本武道館での海外進出発表前の披露されるなど、BABYMETALの「次の扉」を暗示する曲である。今年12月、SU-は成人となり、来年3月YUIとMOAは高校を卒業する。Metal Resistance第6章の扉はすぐそこまで来ているのだ。
大スクリーンにアップになるSU-は表情豊かに、さらに運命を受け入れてきた自信に満ちて、「♪もう二度と戻らないわずかなときをこの胸に刻むんだ、いちごの夜を」と歌う。
ブレーク。汗まみれのYUIは「みんなー用意はいい?」と叫び、MOAもニコニコ顔で「いくよー」と叫んだ。そして「ヘドバン!ヘドバン!」と煽る。ぼくはシート席を見上げる。全員が頭をふり、あるいは両手を掲げ、ヘドバンしていた。ピットでは土下座ヘドバンしているメイトさんもいる。3万人のヘドバン大会。東京ドーム5万5千人には及ばないが、やはりここは巨大な小箱、巨大な鹿鳴館なのだ。
三人が人形ぶりで倒れ込むと、ステージ上にはサーチライトのような光が現れ、レーザーショーが始まる。不穏なシンセサイザーのSE。スクリーンには暗闇に銃弾かミサイルが飛び交うような映像。これはもしかしたら緊迫した世界情勢の暗示なのかもしれない。そこに戦国のSEがかぶさると、三人がBABYMETALフラッグをもって再登場。これはもう、危機に瀕した世界を救うヒーローだ。
12.Road Of Resistance
である。当然、ピットはまたも巨大サークルピットをつくる。Cブロックのぼくも逆圧縮され、スタッフが後ろから柵を必死で抑える。
「♪1234」から、超高速サークルピットが始まる。本当に尋常ではない速度。ここは鳴門海峡か。
Metal Resistanceとは、ただのアイドルもしくはアーティストのキャッチフレーズかもしれない。
そのファンをThe Oneと呼び、「メタルで世界を一つにする」なんてのは、CDやライブチケットやへんてこなグッズを売るための商品イメージに過ぎないかもしれない。
それをキツネ様の命令だなんてのは、メタルのお約束、反キリスト、サタニックなギミックに過ぎない。
だが、漠然とではあっても、ぼくらメイトはそれを心のどこかで信じ、日常生活の場面でも、BABYMETALみたいに既成概念を打ち破り、あくまでも大真面目に、いいパフォーマンス(=仕事)をしよう、世界の友達に心を開こうという思いでいる。
アイドル志望の小学生にメタルをやらせ、生バンドをつけ、国内のロックフェスを総なめにし、本場欧米のライブ会場で数万人を沸かせ、雑誌で見た伝説の大物バンドとツアーを巡業するようになるというとんでもないことを彼女たちはやってのけた。
であれば、ぼくらももうちょっとがんばれるのではないか、なんとかなるのではないか…。
その心のありようこそが、Metal Resistanceなのだ。
「♪woo woo woo woo…」3万人のシンガロングが響き渡る。思えば国内での初披露はここSSAの新春キツネ祭りだった。そのときは客席中央に出島があり、赤い橋がかかっていた。今回はシンプルな構造だけに客数は多い。
「♪そう、ぼくらの未来、On the way」のあとのSU-の煽りは「C'mon!Saitama!」
「♪Get your Fox Hands U---pp!」で曲が終わったが、「See you!」はない。まだ続く。
流れたSEは、ウェンブリーのThe Oneと同じ。
スクリーンには、燃える銀河の映像が映り、やがて場内の観客席が映し出される。
そして、正面のスクリーンにガウンを着た三人が映し出される。
13.「The One」である。
物販〜午後のところで書いたように、16:00に世界各国の国旗を掲げた集合写真プロジェクトがあった。今回もぼくが会った限りでも、ドイツ、オーストラリア、プエルトリコ、アメリカ、イギリスからメイトさんたちがやってきていた。
BABYMETALのファンに国境は関係ない。国籍や性別や年齢や立場や意見が違っても、誰でも、BABYMETALファンならThe Oneである。そういうプロダクトになり得たことこそが、BABYMETALの価値なのである。
場内では国旗を振ることが禁じられているから、BABYMETALのロゴタオルを振るのが精いっぱいだが、曲中、何度も映し出される場内では、全員が「ららららー」と歌いながらキツネサインを振っていた。
そして、曲終わりと共にライブは終わった。「See you」はなし。
さて、問題の予告編。
今日も続きがあるかもしれないので、うかつなことは言えないが、聴き取れた限りはいくつかのキーワードがあった。
「5つの扉すべてが開いた時、キツネ様の新たなるお告げの全貌が明らかになる」
「聖なる人が聖なる神へと生まれ変わるとき、Metal Resistance第Y章が始まる」
「三つ目の狐が現れ、ついに、あの聖地でイニシエーション、洗礼の義が行われる」
ううむ。
終了は20:30。ライブとしては120点満点。だが、結局新曲が披露されることもなく、最後の予告編は謎だらけ。
でも何かが進んでいることは間違いない。
それを確かめに、今日も行く。
(つづく)