Ant-c.(アンティモニウム・クルーダム)は、三硫化アンティモンから作られたレメディです。
輝安鉱の結晶体として、自然界に存在し、産出されます。
世界で、最も大きく美しい結晶が取れたのは、今は閉山されていますが、愛媛県西条市市ノ川の鉱山でした。
日本刀のように美しいといわれ、明治期に海外にたくさん流出しました。
現在、大英博物館やアメリカのスミソニアン博物館でも所蔵されています。
輝安鉱の結晶は、柔らかく、爪で傷がついてしまうほどです。
融点も低く、ろうそくの火でも溶けてしまいます。
銀白色の美しい結晶は、空気に触れるとだんだん黒ずんできます。
もろくて傷つきやすく、熱にも弱く、空気に触れると黒ずんでしまう。
この性質は、このレメディを必要とする人の症状に反映しています。
Ant-c.の人は、見られること、触られることを嫌います。
人から関心を向けられるのがいやで、一人が好き。
自分の周囲の世界に失望し、単純にそれを締め出してしまいます。
そして、自分独自の理想化された世界を作り出して住んでいる。
詩的で、センチメンタルな人です。
現実に向き合いたくなく、現実には、自殺したくなるほど失望しています。
MIND; SUICIDAL disposition; shooting, by 自殺傾向:銃殺によって
という症状の中に入っているレメディでもあります。
月の光には特に敏感で、以下のルブリックスは、Ant-c.だけの精神症状です。
MIND; ECSTASY; night; walking in moonlight 恍惚状態;夜;月光の中を歩く
MIND; SENTIMENTAL; moonlight, in, ecstatic love 感傷的;月光に中、恍惚的な愛。
硫化アンチモンは、太らせるために、豚に食べさせていたようです。
このレメディは、豚のレメディと言われています。
このレメディを必要とする人も、太りがちです。
理想的で、繊細ですが、どこか荒々しさをもち、高貴な感じがしないタイプです。
問題を持ちやすいのは、消化器と皮膚。
精神的なバランスを崩しやすく、食べることによって解消しようとしますが、それによって消化器をこわしてしまいます。
皮膚の問題では、膿痂疹、湿疹、蕁麻疹。硬化して、ひび割れたりします。
爪も弱く、肥厚したりひび割れをしたり。
足の裏には、いぼ、魚の目、タコなどもできやすい人です。
とびひができたお子さんに、このレメディの低いポテンシーのものをよく使います。
寒さには敏感ですが、太陽の熱、ヒーターの熱には耐えられません。
周期律表のテーマから、このレメディを眺めてみるのも、とてもおもしろいです。
アンチモンSbは、第5シリーズ、15ステージにいます。
第5シリーズは、銀、パラジウムなどの並ぶ、銀シリーズ。
創造、芸術、ショー、パフォーマンスといったテーマを持ちます。
Ant-c.の人もセンチメンタルで、詩を愛し、月の光に敏感な芸術的なタイプです。
15ステージのテーマは、明け渡す、喪失、毒、降参する・・・など。
かなり、崩壊が進んだレベルです。
15ステージの第3シリーズ(人間関係、アイデンティティがテーマ)には、Phos.(燐)がいます。
Phos.の人は、自分が十分に関心を払われていないと感じ、多くの友人に囲まれているときにだけ、満足を感じます。
15ステージの第4シリーズ(安全、安心、家族、仕事がテーマ)には、Ars.(砒素)がいます。
Ars.の人は、世の中は自分を脅かすものだととらえ、孤立感と不安定感を感じています。
アンチモンSbは、Ars.の真下の、第5シリーズにいます。
自分の周囲の世界に失望し、一人でいたい人です。
燐や砒素が猛毒であるように、アンチモンも猛毒です。
15ステージの第6シリーズ(責任、リーダーシップ、権力などがテーマ)には、Bismuthumビスマスがいます。
ビスマスは、高い地位にいて、責任を果たせなくなったような人。自らの命を絶とうとします。ビスマスは、腹切りレメディとも言われています。
アンチモンには、今回ご紹介した、Ant-c.(アンチモニウム・クルーダム)だけでなく、Ant-t.(アンチモニウム・タリタリクム)というレメディもあります。
こちらは、レメディキットにも入っているもので、身体的な症状が有名です。
とても、弱った状態。そして、咳や嘔吐の症状のときに良く使うものです。