モデル末期ではあるが、BMW X3 20dとX4 28iを試乗した。それは使い勝手とかデザインの差異ではなく、ディーゼルとガソリン、どちらのエンジンが優れているのか!?を確認することが目的。
なかなか電気自動車が本流にならない中、世界的なSUV人気と合間って、国内市場はディーゼル人気。しかし、実際CX-5やGLCなどに試乗すると、振動やノイズが大目に見ても、とても許容できる範囲に収まらない。唯一ガソリンエンジンを凌駕できているディーゼルエンジンモデルは、私の知るところでは新型5シリーズだけだ。
参照:
ならば、ガソリンとディーゼルをやはり比べるべきであろうと、5シリーズの完成度に関心させられたBMWのSUVで比較することにした。X3のガソリンモデルは試乗車が無いとのことで、同じプラットフォームのX4を用意してもらった。
結論から言えば、BMWはかなり高次元でガソリンエンジンもディーゼルエンジンも仕上がっており、この次元になると優劣をつけにくく、個性の違いのレベルかと言える。では、その違いをお伝えしよう。
まずはX3 xDrive 20d(627万円〜)。X3は今年末には新型の発表がされると言われている。本モデルは2014年はじめにマイナーチェンジをし、7シリーズや5シリーズよりもひと足早くキドニーグリルとヘッドライトを繋いだデザインを採用した。電動テールゲートの他、衝突回避の自動ブレーキ、レーン逸脱警告、2016年には死角からの車両接近を知らせるレーンチェンジ警告、レザーシート、シートヒーターなどを搭載し、安全装備の充実化を図るなど大きな進化を果たしていた。ディーゼルエンジンは、直列4気筒DOHCツインターボで380Nmと充分なトルクを発生し、18.6km/lの低燃費を実現している。
X3のインテリアのデザイン、質感は、やはりひと世代前の3シリーズ。GLCと比べれば、メルセデスがCクラスの質感を大幅に上げ共通化していることもあり、樹脂パーツなどで見劣りする。
赤のステッチが素敵。
これまでに見かけたことがないレッド。都会に溢れるBMWの中では、見つけやすくて良い?ベージュの革張りシート。このカラーの組み合わせは、女性ユーザーを意識した試乗車なのか。
エンジンを始動。えっと、ディーゼルでしたっけと言うくらい、ややノイズが聞こえる程度。GLCとは大違い。
ちなみに旧型の523iでは、ガソリンエンジンでありながら、これディーゼル?と言うくらいノイズが大きかったが、勿論比較にならないくらい静か。遠くで特有のノイズがある、という程度。当然だがステアリングの振動はない。
走り出せば、厚みのあるトルクで、モリモリと加速する。ディーゼル特有のサウンドが足先の方から聞こえるが、GLCのような耳につく不快さはない。ここまでトルクフルだと、平地ではアクセルのパーセルをより細かく踏み込む必要もあり、少し神経を使う。
少しコーナーのあるきつい上り坂を、まるで活き活きとした馬のように駆け上がっていく。平地に戻れば時速50kmを12,000回転程度で巡航している。
信号で停止すると、アイドリングストップに入るが、エンジンが切れる際の衝撃が少し気になった。
本題ではないが、乗り心地は良い。路面からの突き上げは、かなり抑えられており、Peugeot 3008とは比べ物にはならない程、足回りが良いことに気がつく。しかし、SUVという性質もあり、全てのショックを新型5シリーズのように否している訳ではなく、スポーティさのある硬さを残し、しっかりと路面を捉えている印象での情報が伝わってくる。
続いてX4 xDrive 28i(699万円〜)。BMWはクーペモデルを4、6、8という数字でラインナップしており、X4もX3のクーペモデルの位置づけになる。X4には20iがないらしく、28iとの比較になる。2000ccのガソリン直列4気筒ターボエンジンを搭載。旧型5シリーズの523iではなく、528iと同じエンジンである。350Nmを低回転から4,800回転まで発生させ、245psを5,000回転で発揮する。燃費は13.7km/l。
走り出してすぐ、このエンジンの良さに唸らされる。ガソリンエンジンも走り出しからトルクが凄い。しかも、回転が伸びやかなので、加速度もスムーズ。当然ながら、エンジンそのものが静か。ディーゼルエンジンのノイズを押さえ込んだ遮音性がそのままガソリンモデルにも生かされているのか、ジェントルな雰囲気もあるクルマに仕上がっている。BMWらしい駆け抜ける喜び、ハイエンドな質感を満喫するなら、やはりガソリンエンジンかと思わされる。
アクセルワークへの反応もリニアで、ディーゼルのように気を使うことはない。直列6気筒の35iでなくとも、28iとなると仕立てが良いと感じられるだろう。
ちなみに、ガソリンエンジンである20iのエンジンスペックは、270Nm、184psとなることから、28i同様の評価になるのか、やはり旧型523iのノイジーな印象と同様なのか、今回確認ができていない。
それぞれの価格は、X3の20iが599万円、20dが627万円、28iが664万円。20iと20dの価格差30万円は、エコカー減税などで15万円程度まで縮小し、軽油とハイオクの価格差から一回の満たんで3,000円程度の節約ができることから、遅くとも5年で回収できるという。
赤のステッチが素敵。
後部座席の足元スペースは充分。
GLCよりも広く、シートレールの幅も広いので足を伸ばしやすい印象。
ラゲッジスペースは550?。シートを畳むと1600?。GLCと同じである。
GLCよりも広く、シートレールの幅も広いので足を伸ばしやすい印象。
ラゲッジスペースは550?。シートを畳むと1600?。GLCと同じである。
今回、ガソリンとディーゼルを比較したが、BMWのディーゼルは、ノイズについては、遮音性も高く、音質もガサツでなく、ガソリンエンジンに劣るところはない。気を使うところはあるが、トルクも太いために、SUVらしいパワフルな加速やヒルクライムを楽しめる。SUVらしさを求めて購入するなら、ディーゼルで良いと思う。
一方、BMWらしく、さまざまなワインディングを操りたいなら、ガソリンエンジンの28iが良いだろう。アクセル操作にリニアに反応し、エンジン回転数がボトルネックなく、ストレートに上がり、意のままにコーナを駆け抜ける。SUVでありながらも、28iならそんな楽しみ方ができそうだ。
新型X3ではエンジンも変わり、PHEVも加わるのではないかとのこと。さらに進化していることを期待したい。