周囲は真っ暗、
車が通る気配すらない。
病院を見ていると、
裏口に停車している
救急車の前方半分が見える。
その前方で、搬送をおえた
救急隊が報告を
しあっているようだった。
もしかしたら、気が付いて
手を貸してくれるかもしれない。
こっちを向いて!
お願い…
そんな気持ちでみつめていると、
1人の隊員がしっかりと
こちらを側をみた。
けれど、なんの
反応もなく
運転席へ乗りこむ。
こんなにはっきり
見えるのに、なんで…
数秒たって、自分が暗闇に
いることに気が付いた。
暗いところから、明るいものは
よく見えるけど、向こうから
したら、こっちは真っ暗。
私は見えてない。
花壇のレンガに腕をおき
顔をのせる。
目をつぶり、こない
貞彦さんをまった。
遠くから足音が聞こえてくる。
そして途中から地面をけり上げ
る音になって走ってきた。
やっと貞彦さんがきてくれた
と思い顔をあげると
「大丈夫ですか!!車イスを
もってきますから、がんばってください!!!」
巡回中の警備員さんだった。
裏口のほうへ走って引き返し、
すぐに、もう1人の警備員さんと
一緒に車イスをもってきてくれる。
私を抱え、乗せてくれ
1人は小走りで
車イスをおし、もう1人の
警備員さんは私の身体を
気遣い励ましながら、
病棟まで急ぐ。
胸が張り裂けそうに
『ありがとうございます、ごめんなさい』
を繰り返すのに、うめき声しか
でず産んだら必ず、お詫びと
お礼にいくことを誓った。
そのまま病棟の
助産師さんに引き継いでもらい、
内診台に上がった時、
子宮口は全開ですぐに
出産となった。
※貞彦さんに特定されないようにフェイクを入れています。
※数年前の記録です。私と息子は現在幸せに暮らしています。
いつも、たくさんの「いいね」
「コメント」をいただだき
ありがとうございます。
「書いていると辛くはないですか?」と、温かい
お気遣いの言葉をいいただきます。
家をでて、すぐのころは、
心の一番奥にしまっていました。
自分が判断して、自分に起きた現実だけど
その過去を受け入れられなかったです。
それを認めてしまうと、貞彦さんと
すごした10年以上ははなんだったのだろう
と思い苦しくなりました。
浦島太郎が竜宮城へいき、帰って玉手箱を
あけるとおじいさんになるように、
長い地獄をぬけて、玉手箱をあけたら
おばあさんになる、そんな感じでした。
けれど、月日がたち過去は自然と
自分の一部として溶け込みました。
ぷう助の事を書いていると、
苦しみなどはなく、成長して
ご飯をわしわし食べている
今を、より愛おしく感じます。
浦島太郎は、おじいさんに
なり、それはショックなことだった
と思いますが、その後
いろんな説がありますが
楽しく暮らし、あたらしくできた
知人なんかに、信じられない
竜宮城の話なんてして、
笑ってすごしていたのかもしれません。
生きていながらも
悲しく終わる物語には、
続きがあって、ずっと悲しい
ままではないのだと、自分の
人生にも、思いました。
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