んでも、やっぱり好きな音楽を聞きたいという欲求はそれなりになって、昨今は買うだけでほとんど読んでいないミュージック・マガジン誌にそろそろ見切りをつけて新しい雑誌を買おうかな、なんて思ったりした。
そこで、CDジャーナルを買ってみた。なんでも、日本で発売されているCDを網羅しているらしいのだ。ミュージックマガジンの恣意的な選考に強烈な不信感があるので、もういっそのこと、全部網羅しているものがいいのか、と思ったのである。
とりあえずほとんど知らないミュージシャンが大きく取り上げられていて、追いつくのは大変だな、なんて思いながらパラパラ見てたら、ほとんど最後のページにBOOK REVIEWがあった。署名もない、取ってつけたようなものだったんだけど、そこで、
「中村とうよう音楽評論家の時代」
という本が取り上げられていた。
全く知らなかった。
中村とうようさんは、ワタクシが最も過激で尖っていたとき、神様だった人である。というか、とうようさんになりたくて過激で尖った。とうようさんのような文章書きたくて、とうようさんのような視点を持ちたかった。
ワタクシがミュージックマガジン誌を買ってとうようさんを知ったのは、1987年の12月号。すぐに夢中になった。けれど、実はその2年後、1989年の夏、渋谷陽一さんとの論争があって、そのときに見せた中村とうようさんのあまりの失態ぶりに完全に失望して、ワタクシの恋愛は終わった。
2年どころか、1年半ぐらいしか熱病は続かなかったけれど、それ以降も、ワタクシの望む音楽雑誌のフォーマットがミュージックマガジンにしかなくて、今だに買い続けているんだから、どんだけ未練あんねんって話しでもあるけど。
税込みで4000円以上もする「中村とうよう音楽評論家の時代」を早速買った。届いた実物をみたらほぼ600ページある。ハリーポッターを思い出す分厚さに圧倒されて、ちょっと興味のありそうなところをパラパラと見てみた。
なんかめっちゃくちゃ懐かしい。
天命も知らずフラフラして、いつ死ぬかも分らん昨今、ちょっと自分のことを、この本に添いながら振り返ってみようかと思ったのであります。
ミュージック・マガジン前夜
小学校時代は山口百恵ちゃんに夢中。本気で結婚すると思っていたので、三浦友和さんのことは蛇蝎のごとく嫌っていた。百恵ちゃんは自分よりも7歳年上で、当時からワタクシは愛に年齢は関係ないという真理については獲得していた。
親も百恵ちゃんファンで、当時は結構大変だったレコードも、ほぼ完璧に揃えていた。だから、シングルヒット曲のみではなく、アルバム単位で楽しむことができると知ったことは大きかった。百恵ちゃんは宇崎竜童さんや阿木燿子さんが有名だけど、それだけではない、びっくりするクリエイター陣に囲まれていた。カワイイ外見で入ったのに、ちゃんと音楽的にも楽しませてくれた。今だにちゃんとCD持ってるし、聞いてるもんね。
ちなみに、今は三浦友和さんは大好きな俳優さんです。見直したキッカケは、後に夢中になるRCサクセションの忌野清志郎さんと同級生だった、と知ったとき。百恵ちゃんの結婚式に清志郎が参加していたと知ったときは、運命を感じた。何の?
中学のときは、友人からYMOを教えて貰って夢中に。YMOはご存じ素晴しいミュージシャン揃いで、そこからどんどん音楽の裾野が広がって行った。当時はイマイチ分らなかったけど、細野さんの初期のソロは今では最も愛するCDの一つ。ちなみにこの頃、レンタルレコードができて、少ない小遣いでも沢山音楽を聞くことが出来たのはラッキーだったな。
そして細野さん繋がりで知った山下久美子さん、佐野元春さんとかをよく聞いてた。坂本教授とのコラボで清志郎を知ったんだけど、RCに爆発するのは、高校に入ってから。
そこからストーンズ知ってって感じでどんどん音楽聞くようにはなったんだけど、当時はクラブの部長だったりして(ハンドボールだよ〜ん。)、いろいろと忙しかったなあ。
その後、身の程知らずな大学を希望してて、浪人生活に入った。
悪い友人からジャズを教えてもらってはまる。参考書じゃなくて、油井正一さんのジャズ書を読み、相倉久人さんのジャズ論を読んで夢中になってた。勉強そっちのけでアルバイトをしては、今もあるのか? 神戸のホンキートンクという中古レコード屋さんに行ってはレコード買いまくってた。だいたい平均月30枚以上は買ってたと思う。勉強する時間などないのが分かるな。(笑)大のお得意さんだったので、ストーンズの貴重なレコードとか貰った記憶もある。
夢中になっていたのはジャズだったんだけど、ジャズというのはどうしても1950年代とかのものが素晴らしくて、ずっと古典を聞くことになる。
現在は休刊になってるけど、日本一有名なジャズ雑誌、スイングジャーナルをやっぱり自分も読んでた。でも、違和感と失望感があったんだよね、ロックと比べて同時代のものがないっていうか。いや、単なる情弱による勘違いだったんだけど、スイングジャーナルを読んでたらそうなるよ。
で、音楽雑誌を探したんだよ。情報を知りたくて。ほかのすごいジャズを知りたくて。絶対にあるはずだし。
だから、当時は、というか今もかな? ミュージックマガジンの主力はロックなんだけど、実はジャズ雑誌を、ジャズを探して巡り合ったんだよね。
とはいえ、ロックも好きだったし、できるだけいろんな音楽を聞きたいと思ってた自分には、ジャンルに囚われず取り上げているミュージックマガジンは、まさに望んでいた雑誌だった。
忘れもしない、甲子園球場の近くにある書店に行った。アイビー書房だ。そこでかたっぱしから音楽雑誌を立ち読みしてて、ミュージックマガジンを手にとったときは、これだ、と思ったよ。
そこでジャズ評論を書いてたのが中村とうようさん。最初に目に入ったのは、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのレビュー。
『ディスコと同じノリで自然に踊りだしてしまう。こんなのこれまで無かった。ジャズファン以外におすすめ。』(1986年12月号220ページ)
って書いてた。
早速購入。自然に踊り出す。
これが最初の出会いだったなあ。
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